右手に持った小銃をターゲットに向ける。
手元にある弾は残り一つ。これを外せばゲームオーバーだ。
俺の後ろでカスミは両手を結び、目を固く閉じて祈っている。
彼女の落胆した顔など拝みたくない。そのためにも絶対に、外すわけにはいかない!

ターゲットに全神経を集中させ慎重に一撃必倒の狙いを定める。
この季節の蒸し暑さ、頬を伝う汗の滴、周りの喧騒などはもはや存在しない。
あるのは目の前のターゲットのみ。
狙いがぶれないようゆっくり、グイ、グイ、と引き金を引き――

ポンッ!

軽い音をたてて砲身から弾が飛び出した。
それを受けたターゲットはグラリグラリと前後に揺れ始める。
生唾を飲みその様子をじっと見つめる。
規則的に揺れながら、それは少しずつ振幅を小さくしていく。
くそっ、だめか……あっ。
突如、ターゲットはデコピンでもくらったように後方にバランスを崩した。
そして、そのまま倒れて、落ちた。

「よ、よっしゃあぁ!」
「やったぁ!」
思わず小銃を握ったままの右手をかかげて、ガッツポーズをとる。
カスミも歓声をあげて、俺の左腕に抱きついてきた。
「ウー! ハーッ! まさかこいつが落とされるとは!
 お前の腕前とくと見せてもらった、さあこれを受け取るがいい!」
やけに筋肉隆々の射的屋のおじさんはやけに興奮しながら、先ほど落としたスターミーのぬいぐるみを渡してきた。
「どうも、ほら、カスミ」
そのぬいぐるみを受け取り、カスミに手渡す。
「ありがと……うわぁ……」
小声でお礼を言いいながら、カスミは目を輝かせてぬいぐるみを見つめた。
こういう女の子らしいカスミを見るのはずいぶん久しぶりだ。
頑張ったかいがあったというものだ。


今夜は七夕祭りが行われていた。
もともとはマサキ、カスミと来る予定だったが、
マサキがドタキャンしてカスミと二人で屋台巡りをすることになった。
その折に、射的屋を見つけ彼女はそこで例のぬいぐるみに一目惚れしてしまったらしい。
が、撃てども撃てども目的のものには当たらない。
途中で、「俺がやろうか?」と進言したのだが「うるさい!」と一蹴された。
そして、全ての軍資金を使い、俺からも借金をして購入した、その最後の一発になって、
「……ほら、やらせてあげる……無駄にしないでよ?」
などという無茶を、涙目で睨みながら言った。
……断れるはずがないじゃないか。


見ると、カスミはぬいぐるみに頬ずりを始めていた。
気持ちが昂ぶって自分の世界にワープしてしまっているらしい。
やれやれ、と頭を振ってから、視線を移動させる。
「あ」
人ごみの中にナツメちゃんがいた。
立ち止まって、ぼんやりと自分の左手のひらを見ている。
「ナツ……」
声をかけようと一歩踏み出したと同時に、彼女は人ごみに流されるようにフラフラといってしまった。
身長の割りに細いその背中が、やけに悲痛なものに見えた。

「オレンジ?どうしたの?」
「え?」
自分の世界から帰還したカスミが話しかけてきていた。
「何、ボーッとしてるのよ?」
「ん、いや、ちょっと考え事」
「ふーん……ほら、次いくわよ」
と、彼女はクルリとまわって背を向ける。
「次って……もうお金ないだろ、俺もカスミも」
あきれて言うと、彼女は一瞬固まり、今度はゆっくりとこっちを向き、
「い、今から花火を見る場所を確保しに行くの!今から行けばいい場所がとれるでしょ!」
「……まだ花火まで2時間近くあるんですが」
「うるさい!とにかく行く!」
反論むなしく、強引に腕を掴まれて河原まで引きずっていかれた。


そして、俺達は見るのだ。
『カントーポケモンスクール 研究科』と書かれたプラカードを掲げ、
広いブルーシートの上に、ポツリ、と体育座りをするマサキの姿を……








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どう考えても時間かけすぎだろ俺……
つか、未だにキャラの性格が掴めてないよ……
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